都会でひとり暮らしをしていた学生時代。
時々、夜にひとりで歩いていました。
大学が閉まるギリギリの時間まで粘り、アパートまで1時間歩く帰り道。
橋の上から漆黒の川を見下ろし、どうしようもない瑣末な出来事を川に流します。
飲み会の帰り、暗闇の冷たい空気を吸いながら歩く。
夜中、アパートを飛び出してひたすら歩く。
1人で歩いていると、頭の中に散乱していた物事が闇夜に吸い込まれ、ざわめきが少しずつ静まっていきます。
街灯が照らす人影のない住宅街。
水を打ったようにしんと静まる空気。
その中を1人歩いていると、生き返っていくような気がしました。
そして安堵感とともに訪れる眠気。
配達前の作業で慌しい新聞販売店。
バイクの音。
少しずつ鼓動が速くなる街。
私は川の小石のように、布団へと転がり落ちていくのでした。