工事中の五十里(いかり)ダムは、いつもと全てが違っていました。
栃木県日光市の山奥にある湯西川温泉へ行く途中、五十里ダムのダム湖「五十里湖」の水位が低く、茶色くにごっているのを不思議に思いました。
△2017年10月中旬の五十里湖
いつもはエメラルドグリーンのきれいな湖なのに、どうしたのでしょう。
気になったので五十里ダムに行ってみました。
目次
- 2017年10月、五十里ダムの上流側へ
- 2017年10月、工事中の五十里ダム下流側
- 選択取水ってなに?
- ダムに穴をあけてる!
- ビフォーアフター
- 2017年11月上旬 工事中の五十里ダム
- 下野新聞さんに感謝
- 2017年12月中旬 工事中の五十里ダム
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2017年10月、五十里ダムの上流側へ
上流側に車を止めると、駐車場に関係者らしき方がいらっしゃいました。
ご迷惑かな…と思いながら恐る恐る尋ねると
『工事をするために放水して水位を下げているんですよ。濁った水を……』と、さらに説明して下さったのですが、私たち夫婦の頭では理解ができません。
まずは工事現場を見てみることにしました。
これ以上近づけず、何の工事なのか詳しくわかりません。
五十里ダムの「わくわくダムダム資料室」に説明があるかも!と入りましたが…
工事用の作業構台についての説明のみ。
作業構台(さぎょうこうだい)とは、斜面から張り出したステージ。
十分な作業スペースや材料置き場が確保できないとき、ステージを作り、その上で作業します。
上の資料より抜粋
資料室から見ると、ダムの下流側で作業が行われているようです。
そうだ、下流側の駐車場から見てみよう!
2017年10月、工事中の五十里ダム下流側
車を下流側に停めると見たことのない看板が。
工事の説明です。これで謎がとける!
現在、五十里ダムでは「選択取水設備」「利水放流設備」「水力発電設備」の3つを作る、施設改良工事が行われています。
(看板に水滴がついていたため見づらいですね…)
選択取水ってなに?
選択取水設備とは、ダム湖内のにごりなどの状況に応じて、取水する水深を調整できる設備です。
どうして取水する水深を変えるのでしょう。
ダム湖の水温と濁りは水深によって3段階(表層・中層・下層)に変化するため、水の用途に応じて適切な水をくみ上げる選択取水を行う必要があります。
ダム湖の水は表層(水面近く)が温かく、湖底に近づくほど水温が下がります。
また、大雨などが降った場合は、にごった水がダム湖内の表層に流れ込むため、一時的に にごりが変化します。
たとえば、作物を育てるための農業用水には温かい水が最適です。
農業用水用の水をくみ上げるときは、太陽の熱で温められた表層の水を取水します。
水道水には にごりが少なく、プランクトンなどが比較的少ない層の水を取水します。
ダムに穴をあけてる!
工事説明を読んでいると、ダムから楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
作業構台の作業員さんたち。
筒状の何かが、ぐるぐる回転しています。
コアボーリングマシンでダムに穴を開ける作業中。
うわー!楽しそう。
駐車場の隅に、作業構台を作るときに切り取ったダムの一部が置いてありました。
ただのコンクリートなのに、ダムの一部だと思うとカッコいい。
ビフォーアフター
工事が始まる前の五十里ダムはこちら。
▽完成イメージ
下流側に太い放流管が設置されます。
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2017年11月上旬 工事中の五十里ダム
2017年11月、約1ヶ月前に見た時よりさらにダム湖の水位が下がっていました。
紅葉がとてもきれいです。
上流側から見た五十里ダム。
普段は水面下にあって見えないダムの本体(堤体)部分が、よく見えます。
下流側ではダムに穴を開ける作業が進み、小さな穴が連なって弧を描いています。
1ヶ月前にはなかった単管パイプを組んだ作業台?足場?があるようですが、コアボーリングマシンが確認できません。
これからどのように工事が進められていくのでしょうか。
天端(てんば)と呼ばれるダム提体の一番高い部分では、大きなクレーンが稼働中。
1ヶ月前は、手前に見える工事用の作業構台の上に置かれていました。
前回と同じく、ダムの下でも工事が行われています。
下流側にある川治温泉を車で走っていたら、正確には覚えていませんが「五十里ダム下流工事……(?)」という看板がありました。
その看板の場所から作業用車が出入りしているのでしょうか。
工事中の五十里ダムは見るたびに姿を変えるので、大変興味深いです。
下野新聞さんに感謝
出典:https://this.kiji.is/300461576941634657
2017年11月7日、下野新聞社さんが
「五十里ダム、湖底あらわに」という記事を書いて下さいました。
17年ぶりの抜水工事の影響で、ダムの水位が通常より30メートルほど低くなっているそうです。(11月6日時点)
五十里湖底などの大部分が露呈し、旧会津西街道とみられる跡など、水没前の地域の様子もわずかに確認されました。
参考:五十里ダム、湖底あらわに 17年ぶり工事で抜水 日光 - 下野新聞
画像からダムにまつわる歴史を感じ、とてもワクワクします。
個人ではなかなか見られないものを掲載いただきまして、ありがとうございます。
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2017年12月中旬 工事中の五十里ダム
2017年12月中旬、2日続けて五十里ダムへ。
1日目は上流側、2日目は下流側を見学しました。
11月に訪れた時とダム湖の水位は変わらないように見えますが、周囲の木々が葉を落とし、冬枯れの景色が広がっていました。
こちらは、五十里ダムの上流にある湯西川・男鹿川の合流点付近の様子。
右奥は海尻橋、白く雪が積もっているのは五十里湖の湖底です。
水位を30mほど下げたことで、ダムができる前の街道が姿を現したのでしょうか。
川のようにも見えます。
工事中の今だから見られる光景です。
2017年12月、五十里ダムの上流側
上流側でも「選択取水設備」の工事が始まったらしく、作業用の足場がありました。
ダムの表面に「凸」の形が見えますが、これは何でしょう…。
形に沿って鉄筋のような物が打ち込まれているようにも見えます。
11月はダムの天端で1台のクレーン車が作業をしていましたが、今回は作業構台で1台、天端の横で1台が作業中でした。
五十里ダム管理支所・わくわくダムダム資料館のまわりにも工事関係の資材。
撮影していたら、大量の雪をのせたトラックがダムから出て行きました。
冬の工事は除雪作業も加わって大変です。
2017年12月、五十里ダムの下流側
ダムに穴が!
施設改良工事の進捗状況
— 国土交通省 五十里ダム管理支所 (@mlit_ikari_D) 2017年12月5日
コンクリート塊の引き出し、切断、搬出の繰り返しで工事を進めています。
最初の搬出作業が行われました。#鬼怒川4ダム#五十里ダム#施設改良工事
(2017.12.5撮影) pic.twitter.com/RDfOyDTrIt
くり抜いたコンクリートを引き出して、短く切断し、クレーンで吊り上げて搬出しています。
コンクリート塊を「巨大ちくわぶ」とTwitterでおっしゃっている方がいましたが、まさにその通り。
展望駐車場には「巨大ちくわぶ」の一部が展示されていました。
ちくわぶの存在感がかっこいい…
2017/12/09 工事の様子2
— りみ (@rimit_dam) 2017年12月9日
あの穴に入ってみたい。#五十里ダム pic.twitter.com/0Zqr6wKo9T
私も穴に入りたいです。
展望駐車場には、この他に工事の詳しい内容も掲示されていました。
穴は円形ではなく、板付きかまぼこのような形になるようです。
また、穴は下流側が少し下がるように傾斜がつけられています。
放流ゲート・放流管すえ付け状況の写真も。
ダム上流側に据付される選択取水ゲートにより水を取り入れ、
放流管によりダム提体内を抜け下流側の放流ゲートより水を放出します。
大きな放流管にワクワクします。
雪の中の五十里ダム。
標高約600mの五十里ダム周辺はとても寒く、 雪が積もっている場所もありました。
訪れた日は雪が降り続き、時折吹く冷たい風で吹雪くことも。
現場で働く方々にはとても辛い状況です。
工事が無事に終わるよう祈っています。