空き地などに生えるクズはただの雑草ではなく、捨てるところがない万能植物です。
自宅のまわりは耕作放棄地が増え、クズばかり生い茂るようになりました。
『クズは美味しいよ』と知人から聞いてツルの先を食べてみたら、クセがなくて本当に美味しい!
それからクズに興味を持って調べると、繁殖力が強いだけでなく、古くから人との関わりが深い植物だとわかりました。
目次
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驚異的な生命力
クズは マメ科クズ属のつる性の多年草で、地下に大きな塊根(かいこん)を作り、毎年そこから長いツルを伸ばします。
生命力が非常に強く、空き地や土手などの痩せ地でも勢いよく育ち、真夏には1日で50cm以上伸びることもあります。
自宅近くの空き地は、数年前まで春になるとヨモギや菜の花が姿をあらわしましたが、地主さんが手入れをしなくなった途端、一面クズに覆われてしまいました。
クズしか生えない緑の砂漠状態です。
電柱の支線にもクズが巻き上がり危険な状態です。
太陽光発電の機器にツルが入り込み、発電がストップしたこともあると聞きました。
桜の木にも枝先までクズが巻きついています。
クズに巻き付かれた植物は光合成ができなくなるだけでなく、蒸れて病気になり、枯れてしまうこともあるそうです。
そのため、生態系や人間活動への影響が大きく、「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。
参考:世界の侵略的外来種ワースト100及び特定外来生物・要注意外来生物との対応関係|環境省 自然環境局(pdf)
クズは薬になる
クズは、昔から漢方薬として用いられています。
生薬「葛根(かっこん)」は、皮を剥いだクズの根を乾燥させたもので、発汗、解熱、鎮痛、鎮痙作用があります。
有名な漢方の「葛根湯」は、葛根のほかに数種の生薬を配合し、風邪のひきはじめ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みなどに効果があります。
生薬「葛花(かっか)」は、夏から秋にかけて咲くクズの花を乾燥させたものです。
『酒毒を消す』と言われ、煎じて飲むと二日酔いの嘔吐や予防に効果があるとされています。
クズは布になる
クズの繊維は古代から織物に用いられ、新石器時代の遺跡からも出土しています。
ツルを煮てから発酵させ、取りだした繊維を織った布は葛布(くずふ、くずぬの、かっぷ)と呼ばれます。
葛布は軽くて通気性が良く、独特の光沢と透明感があります。
古代日本では庶民の被服や上流階級の喪服などに、また、武士の好んだ直線が出せるところから、江戸時代には袴、裃、陣羽織などに用いられました。
明治維新後、武士の消滅とともに葛布の衣料としての需要が激減。
現在は襖・壁紙などのインテリア、帯・草履・バッグなどの服飾品として販売されています。
葛布は静岡県掛川市の特産品です。
静岡県郷土工芸品に指定され、掛川市のふるさと納税返礼品にもなっています。
掛川の葛布は、たて糸に木綿、麻、絹などを使い、よこ糸によりを掛けないクズの平糸を用いることが特徴です。
かつて九州地方で作られていた葛布は、たて糸・よこ糸ともに よりを掛けた葛糸でした。
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クズは食べられる
クズは古くから食用としても親しまれています。
根
サツマイモなどと同じように、クズは塊根にデンプンを蓄えます。
それを掘り起こして精製したものが「葛粉」です。
葛粉は冷めにくく、冷えると固まる性質があるため、葛餅や葛きりなど、和菓子や洋菓子、料理のとろみ付けに使われます。
また、葛湯は体が温まり、消化にも良いため、離乳食・流動食・介護食・病み上がりの食べ物としても食べられています。
私は受験勉強の夜食に、よく葛湯を飲んでいました。
芽(ツル)
クズの新芽とツルの先端は 枝豆のようなコクと風味があり、天ぷら、おひたしなどにして食べらます。
春の太い新芽はやわらかく、特においしいです。
タラの芽よりも美味しいという方もいます。
ツルの採り方は 先端を手でポキッと折るだけ。
おひたし・和え物などにするときは、軽く塩ゆでしてから皮をむくと食べやすいです。
▽肉巻きにも合うそうです。
参考
クズの芽を食べよう|科学実験データベース│公益財団法人日本科学協会
葉
クズの葉は栄養価が高く、ビタミンC、カルシウム、鉄分、イソフラボンなどが豊富に含まれています。
小さくやわらかい若葉を天ぷらにすると、サクサクとして美味しいです。
おひたし、和え物、炒め物にも合いますよ。
葉と茎を使ってお茶も作られています。
葛茶は渋みがなく、香ばしいそうです。
出がらしは入浴剤に再利用できるとか。
お肌に良さそうですね。
花
色鮮やかな花はほとんど味がなく、料理の彩りに最適です。
天ぷらにすると青紫色、甘酢漬けにするときれいなピンク色に変わります。
軽く塩ゆでして料理の飾りつけに使うのもいいですね。
花房から花を外してから水につけ、虫やゴミを取り除いてから使いましょう。
参考:自然とあそぶ: Break Time / 葛の花を食す
砂糖煮にすると、シロップは飲み物やヨーグルトのソースに、花がらはパン・お菓子作りに使えます。
お酒やジュースにしても楽しめます。
- クズジュース・レシピ : 清治の花便り
- 葛酒 (葛からのスピンオフ) -- 生薬!漢方!民間薬!ひとりぼっちのおにのやま
- 食べる薬草~葛花(かっか)~クズの花酒 | 自分らしく生きて、心の底から田舎暮らしを楽しもう!!
- 雑草☆食系:葛の花酒
クズの花について調べていたら、「ダイエット効果がある」という商品を見つけました。
▽トクホのお茶
▽サプリメント
からだ十六茶にも「葛の花由来イソフラボン」が含まれ、「内臓脂肪を減らすのを助ける」と書かれています。
2017年、消費者庁は葛の花由来イソフラボンを含み「やせる」などとうたっていた機能性表示食品を販売する16社に対し、「景品表示法違反」として措置命令を出しました。
その商品を飲むだけで簡単に内臓脂肪や皮下脂肪が減ると宣伝していましたが、裏付けがなかったそうです。
クズの花に過度な期待は禁物ですね。
参考:葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の 販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について|消費者庁(pdf)
実
クズの実は あまり美味しくないと聞いて、残念に思っていました。
しかし、最近知ったのですが煮豆にすると美味しく食べられるそうです。
▽こちらのサイトで「クズの煮豆」を発見。
大豆に比べると大分小さいですが、普通に美味しく頂けます。
これはいろいろな料理に使えるでしょう。
クズはすべてが食べられる素晴らしい植物ですね。
バイオエタノールを生成できる
2008年、石油の代替エネルギーとして注目されるバイオエタノールをクズの根から製造する技術が、宮崎大学によって開発されました。
セルロースおよびクズの生変換 -21世紀のバイオエタノール-(pdf)
バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなど食料となる作物から作られることが多く、原料価格の高騰などが問題となっています。
雑草として刈り取られることが多いクズは入手しやすいため、低コストでのエタノール生産が可能になると期待されています。
最後に
クズが茂るとほかの植物が育たなくなるため、厄介者扱いされることが多く、アメリカではグリーンモンスターとも呼ばれています。
しかし、古くから薬や布、葛粉の原料として用いられ、美味しく食べられることを考えると、雑草としてただ駆除するのはもったいないですね。
身近なクズをもっと楽しもうと思います。